肺高血圧症

2024.12.10

肺高血圧症患者さんの災害への備え

前回の記事「災害時にも頼ってほしい」では、過去に起きた災害時に医療機関と患者さん、セコムグループが協力して災害に対応したエピソードをお話ししました。災害への備えは大きく分けて3つのレベルで考えなければなりません。一つめは行政や公的な医療機関での備え、二つめは身近な関係者同士で支える備え、そして三つめは患者さん自身の備えです。

ここでは、いつ起きてもおかしくない未来の災害に対して、肺高血圧症の患者さんが今すぐに準備を出来る“備え”についていくつかご紹介したいと思います。

肺高血圧症患者さんが災害時に必要とする準備と対応

災害時は身体に負担をかけない行動を優先しながら、さまざまな病気への配慮が必要となります。肺高血圧症の療養を継続すること、医療機関との連絡方法を確保すること、さらには避難生活で安全な環境を確保すること。いくつもの問題が起こりうる災害時は、日頃から備えた物資や知識、築いた人間関係、情報ネットワークが支えになります。

災害時の備え・事前準備

災害時には病院も被災する可能性があり、すぐに受診ができず肺高血圧症のお薬が手に入らない可能性があります。また大規模な災害が発生してから72時間は救急・救命医療が優先され、通常の外来診療が行われない可能性もあります。被災して少なくとも3日間は個人の備えやネットワークを頼りに過ごすためには何が必要かを考えてみてはいかがでしょうか。

お薬の備蓄・管理

日頃から使用しているお薬は、もしもの時に備えて約2週間分の余裕をもって在庫を持つことをおすすめしています(医療機関によって考え方が異なる可能性がございますので、かかりつけ医にご相談ください)。

特に肺高血圧症の治療に利用される24時間の持続点滴が必要なお薬は、どの病院や薬局にも在庫があるものではありません。万が一に備え、お薬の調製時に使用する消毒綿や固定テープなどの材料も準備しておくとよいでしょう。また充電が可能な医療機器は日頃から余裕をもって充電する習慣をつけ、電池が必要な機器をお使いの方は予備の電池を持ち歩くことも大事です。

お薬や材料は在庫の状態がわかりやすいように保管しておくと便利です。ある患者さんは1日に必要な分をポーチにまとめ、そのポーチをいくつか準備して、自宅のすぐ取り出せる場所に保管しているそうです。避難生活に必要な日用品などの防災グッズと一緒に準備するとよいですね。

また普段から外出時のトラブルに備え、ご自宅以外の場所に在庫をお預けになっているという方もいらっしゃいます。お薬とお薬の調整時に必要な最低限の物品はセットで備え、お薬を扱うための場所を職場や学校の近くでも探しておくと心強いでしょう。この場合は使用期限にも注意が必要です。

お薬手帳・患者カード

みなさんはお薬手帳を利用されていますか?お薬手帳とは、いつ、どこで、どんなお薬を処方されたかを記録できるものです。普段使用しているお薬を管理しておくことで、災害時にも、正確にお薬の情報を伝えることができます。お薬手帳は紙の冊子もあれば、スマートフォンで管理ができる電子お薬手帳もあります。電子お薬手帳であれば、どんな時でも持ち運ぶことができるメリットがあります。
お薬手帳のほかに、緊急連絡カード、保険証のコピーなども携帯しておくと安心です。災害時・緊急時に役立つ緊急連絡カードをセコム医療システムや各製薬メーカーが作成しています。またヘルプマークも万が一周囲の助けが必要なるときの備えになります。

連絡先リスト・支援ネットワークの備え

普段から災害時・緊急時の周囲(医療機関、家族、職場、医療機器メーカーなど)との連絡手段や方法についても確認しておくとよいでしょう。災害時は通信が止まり、かかりつけの医師や家族から連絡できないケースもあります。患者さんが自ら情報収集する状況を想定して、連絡網を整備しておくことは安心につながります。
また地域や職場、患者会など病院以外に人的なつながりをいくつか持っておくと心強いかもしれません。身近な人との関係を育むことも、できることから始められる準備の一つになります。

肺高血圧症患者さんの避難生活での健康管理

お薬の確保

避難生活の状況によっては備蓄をしていてもお薬が足りなくなるケースもあります。緊急時に肺高血圧症のお薬を入手する手段として職場や学校、避難所の近くの医療機関を探しておくことも大切です。前もって医師や薬局などに相談しておくとよいかもしれません。

感染症対策と衛生管理

災害で被災した自宅や避難所は衛生状態を保つことが難しい場合があります。感染症予防のためマスクや身の回りの清潔を保つための消毒薬などの衛生用品の備えを見直しておくとよいでしょう。

身近なものを使った感染症対策の一例として、食品用ラップの活用方法をご紹介します。災害時には避難所での生活を余儀なくされることもあります。水を十分に使えず食器を洗うことが難しい場合や、食器の数が限られていて同じ食器を使い回さなければならない場合などに、食品用ラップを食器にかぶせて使い、ラップのみを使用の都度交換することで清潔な環境を保つことができます。これにより、食中毒などのリスクを減らすことにもつながります。また、お薬の調製などで清潔な作業スペースが必要な場合にもラップを活用できるのではないでしょうか。

災害への備えは日常にも役立ちます

今回ご紹介した災害への備えはほんの一部です。しかし一つひとつの問題と向き合い、物や情報を整備しておくことは、大難を小難に、小難を無難に抑えることにつながるでしょう。また非常時の備えは、旅行や引っ越しといった日常のイベントに活かせるものです。肺高血圧症患者さんの暮らしの知恵としてもお使いいただけたらと思います。

そして普段と違う視点から生活を見直すと、必要な物やネットワークに気づくことができます。日頃からご家族や医療機関と同様にセコム医療システムのネットワークも頼りにしていただけたらと思います。

【災害時に役立つサイト】
①国土交通省 防災ポータルサイト
国土交通省 防災ポータル
②各自治体のポータルサイト
③災害用伝言板(web171)
災害用伝言板(web171) | 災害対策 | 企業情報 | NTT東日本

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