医療機関におけるBCP対策について

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目次

BCP対策について

BCPとは

BCPは「Business Continuity Plan=事業継続計画」の略です。

その意味は、「震災などの緊急時に低下する業務遂行能力を補う非常時優先業務を開始するための計画で、遂行のための指揮命令系統を確立し、業務遂行に必要な人材・資源、その配分を準備・計画し、タイムラインに乗せて確実に遂行するためのもの」とされています(厚生労働省医政局「BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き」(平成253月)より)。

噛み砕いて言えば、大規模災害等の緊急事態に対応できるような体制・計画を整えておくこと、となります。緊急事態においてどの業務を優先するか緊急事態でも最低限の業務を行うために必要なものは何か、といったことを検討しなければなりません。

BCP対策を実施することは、利用者や各取引先等から望まれることであるだけでなく、事業を中断しないことにより、組織の社会的信頼の低下を防ぐことにもつながりますので、医療機関や民間企業、自治体、各省庁など、あらゆる組織で実施されるべきことと言えるでしょう。

本稿では、災害拠点病院以外の医療機関(クリニックなど)におけるBCP対策について記載していきたいと思います。

昨今のBCP事情

BCPが特に注目されるのは、やはり大規模な災害に見舞われた際です。

近年では、19951月の阪神淡路大震災や20113月の東日本大震災がそれに当たるでしょう。想定外の事態に遭遇することで、備えが不十分であった現実と向き合うこととなり、BCP対策が大きくクローズアップされてきました。それでも、朝日新聞の調査によれば(※)、全国695の災害拠点病院のうち、BCP策定済みの病院は228(33%)にとどまります。

20154月時点 https://www.asahi.com/articles/ASJ2N5GNPJ2NULBJ003.html

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県内は88%、首都直下型地震が懸念される東京都内は83%と高水準であるが、全国的にはまだまだ導入が進んでいないのが現状です。災害拠点病院でこの水準ですので、それ以外の病院やクリニックではもっと低水準であることが予想されます。

医療機関におけるBCP

医療機関におけるBCP対策(2).jpg

医療機関におけるBCPは民間企業のそれとは異なる部分もあり、Medical Continuity Plan=医療継続計画」、略してMCPと呼ばれることがあります。

以下、具体的にMCPの内容を見ていきます。

A)新たな医療需要への対応

通常のBCPと同じであれば、災害時に平時と同等の医療提供能力を継続ないし早期回復を目指します。しかし、医療機関の場合、災害によって怪我を負う方々等が多数発生することが予想され、平時よりも多くの医療需要が発生する可能性があります。そのため、平時の医療需要以上の医療提供能力を求められる場面でも対応できる体制を検討しなくてはいけません。

B)インフラ対策

インフラ対策はごく一般的なものです。

・建物の耐震性強化
・ライフラインの確保(非常電源、非常用給水設備、非常用ガス設備など)
・通信手段の確保

ただし、医療の場合には医療機器用に多くの電力を使用する可能性もありますので、ライフラインの確保については、必要な量を正確に把握しておきたいところです。

テナントの場合には、当該施設の管理者に施設の情報を確認しておくようにしましょう。

C)ライフラインの復旧予測

当該地域のライフラインの復旧について、見込みを立てておきます。この見込みをもとに、必要な設備を検討していきます。

例えば、3日で電源が復旧する見込みがあれば、3日間使用可能な非常電源設備を整えるといった具合です。ライフラインの復旧予測等の詳細については、各自治体へ問い合わせてみましょう。

例)千葉県 https://www.pref.chiba.lg.jp/bousaik/higaisoutei/documents/12shou_1.pdf

D)スタッフの招集

実際に医療を提供するスタッフが必要になりますので、緊急時に招集についても検討が必要です。住所や緊急連絡先を把握していないことはないかと思いますが、緊急時の出勤判断を各自で行えるようなルールを決めておいたり、緊急時の出勤方法を予め定めておくことで、スムーズにスタッフを招集できます。

E)非常時指揮命令系統の確立

非常時は全スタッフが招集できるとは限りません。むしろ、その可能性は限りなく低いでしょう。院長初め、各部門のリーダーが集まらないことも十二分にあり得ます。

そこで、院長不在時に誰が指示を出すかといった、非常時の指揮系統も整えておく必要があります。

・リーダー不在時の指示出し担当者の決定
・自己判断を許可する範囲の決定

といったことなどが挙げられます。

通常の担当範囲を超える場合もありますので、災害時の診療マニュアルを準備しておくことが望ましいです。

F)非常時の業務優先順位

前述の通り、災害時には平時より医療需要が増える場合があります。また、スタッフが十分に招集できない可能性も高いです。そのような状況下で医療提供能力を低下させないために、業務の優先順位を決め、医療提供に必須の業務のみに極力絞り込めるようにします。普段の業務の洗い出しから始めましょう。

BCP策定済み医療機関を増やすための課題

医療機関におけるBCP策定のハードルに「負担」と「意識」があります。

A)負担について

通常の業務に追われる日々の中で、前述のような対策を考えることは大きな負担です。

少なくとも各部門のリーダを招集し、施設の確認や現在の業務の洗い出しをしていかなければなりません。こうした時間的な負担に加え、ライフラインの確保のための設備投資や、備品の買い足しを行うことで、経済的な負担も発生します。医療機関は医療機器が高額なため、すでに多額の投資を行っている中、BCPのために追加の投資を行うことに躊躇するのは想像に難くありません。

B)意識について

災害拠点病院以外の医療機関で、特に一般外来のクリニック等は、BCP対策をとって自院が災害時でも診療提供する意識を持てるかといえば、ハードルが高いのではないでしょうか。

しかし、災害拠点病院の数は限られていますし、その他の大規模病院についても、被害状況によっては全く機能しなくなる可能性が十分にあり得ます。前述の通り医療需要は高まりますので、医療提供能力が低下しながら医療需要が増えるという非常に厳しい事態が予想されます。

そこで、風邪程度の症状や軽症の患者を、一般外来のクリニックが受け皿になることで、災害拠点病院はより緊急度の高い患者に対応することが可能となります。一部の医療機関に頼るのでなく、地域全体で非常時の医療提供を支えられるよう、規模に関わらず、全ての医療機関がBCP策定を行うことが求められるのではないでしょうか。

BCP策定をご検討の際は、厚生労働省の資料も参考になります。

 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000089048.pdf

電子カルテとBCP対策

最後にBCP対策における電子カルテについて考えてみたいと思います。

電子カルテは「オンプレミス型」と「クラウド型」に大別されます。

・オンプレミス型:院内に電子カルテ用サーバ機器を設置するタイプ

・クラウド型:院内にサーバ機器を設置せず、インターネットを経由して電子カルテを利用するタイプ

それぞれの特徴を見てみましょう。

◆オンプレミス型◆

(+)災害時に通信が途絶えても使用可能
(―)災害時の転倒や浸水でデータ消失のリスクあり
(―)院外で使用不可(建屋全壊時など)

◆クラウド型◆

(―)災害時に通信が途絶えると使用不可
(+)災害時の転倒や浸水でデータ消失のリスクあり
(+)院外でも使用可能 
   例)避難先で利用する等(ただし、インターネット環境は必要)

上記の通り一長一短ありますが、オンプレミス型でもバックアップだけクラウド上に保存しているものもあります。また、クラウド型でもオフラインで参照できるような仕組みを整えているメーカーもあります。各メーカーの特徴をよく調べた上で選定しましょう。

手前味噌ですが、セコムのクラウド型電子カルテはセコムが運営する強固なデータセンターで管理されております。非常時にも強さを発揮するセコムの電子カルテで、ぜひ安全安心な診療環境を整えてみてはいかがでしょうか。

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