心電図読影の重要性とは?特徴や概要、波形の基本、読み取り方を解説

心電図読影の重要性とは?特徴や概要、波形の基本、読み取り方を解説
目次

心電図とは、体に装着した電極で心臓から発生する微弱な電流を捉えて、心臓の収縮と拡張の変化を波形で表したものです。心電図検査は心臓について調べる基本的な検査の一つで、不整脈の診断などに有効です。また、心電図検査の実施により、心筋梗塞や狭心症の発作といった異常の発見にもつながります。

本記事では、心電図を読影することの重要性について解説します。また、心電図の特徴や波形の基本、読み取り方も解説するので、参考にしてください。

心電図の基本

心電図検査は、重大な病気の発見につながる検査です。中には、速やかな治療が必要となるケースもあります。従って、心電図の読影は非常に重要と言えるでしょう。

心電図検査の方法や種類にはさまざまなものがあります。外来で実施されるのは、両手足首や胸、腹に電極を装着して行う12誘導心電図と呼ばれる心電図検査が一般的です。

ここからは、心電図の基本的な歴史や特徴について解説します。

心電図の歴史と発展

現在の心電図のもととなっているのは、1903年にオランダ人の生理学者、ウィレム・アイントホーフェンが発明した心電計です。

19世紀後半頃、微弱な電流を増幅させる技術が開発されました。アイントホーフェンは電流を電線の動きに変換し、拡大してフィルムに投影することで、心臓の電気活動の記録に成功します。このときの装置は350kgもの重量があり、2つの部屋を占領するほど巨大でしたが、記録される心電図は現代と変わらず高性能でした。

また1907年になるとイギリスの科学機器メーカーとの共同開発により、小型化された心電図計が考案されます。その後、1929年には真空管式の心電図計が誕生し、心電図計の小型化と携帯が可能になりました。1948年には電気回路の交流化や熱ペンでの記録ができるようになり、心電図計が急速に普及しました。

心電図が示すもの

前述のとおり、心電図は心臓の電気的な活動を記録したものです。心電図検査では、検査実施中の数分間における心臓の状態を調べます。心電図の波形によって読み取れることとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 拍動リズムが正常か(乱れの有無)
  • 心筋の異常がないか
  • 心筋壁の厚さが正常か(心臓の拡大・肥大の有無)
  • 治療効果

心電図の波形とその意味

心電図検査では心臓の鼓動が波形で表されます。ここでは、心電図の波形の種類を紹介するとともに、それぞれの意味について解説します。

P波、QRS複合波、T波などの基本波形とその意味

心電図の基本波形の各ピークに付けられた名称は以下のとおりです。
  • P波:最初の小さな波
  • Q波:最初の下向きの波(正常ではほとんど見られない)
  • R波:次の上向きの波
  • S波:次の下向きの波
  • T波:最後に現れる丸い波

波形の間隔(PR間隔、QT間隔など)と意味

それぞれの波形は高さのほか、間隔と持続時間にも意味があります。波形の間隔の意味は以下のとおりです。なお、心電図は1mm方眼紙に記録されており、1コマあたり0.04秒を表しています。
波形の感覚意味
PP間隔心房の興奮が開始し、次の心房興奮が見られるまでの時間
RR間隔QRS波が始まってから次のQRS波が始まるまでの間隔
PQ間隔P波からQRS波までの間隔
QT間隔QRS波の始まりからT波の終了までの時間
PR間隔P波の開始からQRS波の開始までの時間

常見の異常波形とその診断

心電図による検査で波形や間隔、持続時間に異常があった場合は、心臓に何らかの症状が発生していると考えられます。ここでは、心房細動、寝室細動、WPW症候群の異常波形について、その特徴や診断ポイントについて解説します。

心房細動の波形の特徴と診断ポイント

心房細動とは、心房と呼ばれる心房内の部屋が小刻みに痙攣してうまく働かなくなる心臓の病気で、不整脈の一種です。 心房細動の心電図の特徴は以下のとおりです(※)。
  • P波が消失して視認できない
  • 基線に不規則で細かい振れ(f波)が発生する
  • RR間隔が不整で規則性が認められない
上記の特徴に加えて、QRS-T波が正常であることや、心房興奮頻度が1分間に360~600拍に及ぶ、僧帽弁疾患・甲状腺機能亢進・高血圧などの基礎疾患が認められる場合、心房細動と診断されるケースが多いと言えます。
※参考:日本不整脈心電学会.「実力心電図−「読める」のその先へ−」."第6章 心電図判読 1.心房細動".(参照2024-01-18)

心室細動の波形の特徴と診断ポイント

心室細動とは、心室の機能が麻痺して心室が不規則に痙攣する病気です。心臓が血液を送るポンプの働きが果たせないため、数十秒で意識を失います。適切な治療が受けられなければ数分で死に至る危険があります。 心室細動の心電図の特徴は以下のとおりです(※)。
  • QRS波形が著しく変動し規則性が認められない
  • 心室速度は1分間に300拍を超える
心室細動の心電図の特徴は、速く不規則な心拍の様子が見て取れることです。P波やQRS波、T波などを分別できるような波形がなく、速く不規則な波形が連続して見られた場合、致死的不整脈の心室細動が疑われます。
※参考:日本循環器学会.「2022 年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」."3.4 心室細動(VF)".(2022_06_14).

WPW症候群の波形の特徴と診断ポイント

WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)とは、生まれつき心房と心室の間にある副伝導路(電気刺激を伝える余計な伝導路)によって発症する病気です。無症状のことも多いものの、中には頻脈発作が頻繁に起こる方もいます(※)。 WPW症候群の心電図の特徴は以下のとおりです。 ・PQ間隔が狭まり、QRS波がゆるやかに立ち上がる箇所(デルタ波)が見られる ・心拍ごとにQRS波の幅が広がる 心電図に上記の特徴が見受けられた場合のほか、心臓超音波検査やカルーテル検査によってWPW症候群が指摘されることがあります。
※参考:公益財団法人 日本心臓財団.「WPW症候群とは」.(2022_03).

心電図の読影のステップ

最後に心電図を読影するステップを紹介します。

一般的な読影の手順とテクニック

心電図を読むには心臓の簡単な仕組みを把握することが大切です。 心臓が動くときには、心臓洞結節で電気のスイッチが入り、心房や心室に電気が流れていく仕組みとなっています。心臓に流れる電気の流れが変化することで心電図の波形が形成されるのです。先述した心電図の基本波形や間隔、時間は、以下のきっかけもしくは電流の流れを表します。
  • P波:洞結節にスイッチが入る
  • PQ時間:電流が心房から房室結節に流れる(P波の始まりからQ波の始まりまで)
  • QRS波:心室に電気が流れることで心臓が収縮する
  • T波:心臓が弛緩する

心臓は基本的に常に収縮と弛緩を繰り返すため、心電図でもP波からT波までの波形を繰り返します。上記の心電図の波や時間を理解すれば、ほとんどの心電図が判読可能です。

異常を見逃さないためのポイント

心電図から判読できる異常を見逃さないためのポイントは以下の2つです。

・正常な波形を読み取れるようになる ・心電図の基準値(正常値)や異常値を理解する

心電図の正常な波形を読み取れるようになることで、初めて異常があるかどうかを判断できます。そして、各波形の幅や高さ、時間の基準値(正常値)と異常値を理解しておけば、さらに異常を見つけやすくなります。心電図を正しく読み取れるように、必要な知識を習得することが重要です。

心電図を読影して心臓異常の早期発見を

今回は心電図読影の重要性や進化について解説しました。心電図検査を行い、結果を読影すれば、心臓の異常をいち早く把握できます。一定の知識があれば、心電図から心臓の異常を読み取れるようになるため、気になる方はチェックしてみるとよいでしょう。

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