クラウド型電子カルテのメリット・デメリット

クラウド型電子カルテのメリット・デメリット
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「クラウド」という言葉が一般的になって久しいですが、いざ「クラウドってどういう意味?」と聞かれると、何となくのイメージはつくものの、正しく回答することは難しいものです。総務省がまとめた「平成30年版 情報通信白書」には以下のように定義されています。

クラウドサービスの概要

クラウドとは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのことである。今やスマートフォンや携帯電話を使って、メールをやり取りしたりゲームをしたりすることは当たり前になっている。しかし、これらのアプリケーションは、スマートフォンや携帯電話上だけで動作しているのではない。ネットワークでつながるデータセンターと呼ぶ大規模施設に置かれたサーバーやストレージ、各種のソフトウェアなどと連携することで、電子メールやゲームといった"サービス"が実現されている。ネットワークにつながったPCやスマートフォン、携帯電話などにサービスを提供しているコンピューター環境がクラウドである。
出典:平成30年版 情報通信白書 第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長

電子カルテメーカーにおいても、今まで院内にサーバーを置く、いわゆるオンプレミス型が主流でしたが、最近では各社がクラウド型の電子カルテを販売するようになってきており、昨今の時代の流れに合わせた形へと変化してきています。当社では、2001年から日本初のクラウド型(当時はクラウドという言葉はなくASP型と呼んでいました)電子カルテ「セコム・ユビキタス電子カルテ」を販売しており、クラウド型電子カルテのパイオニアとして多くのユーザー様からのご支持をいただいてきました。このコラムではそのノウハウを活かし、クラウド型電子カルテのメリット・デメリットを紹介いたします。

クラウド型電子カルテのメリット

初期投資が比較的安価に抑えることができる

電子カルテを導入するとなると、専用のパソコン・サーバー・プリンタ等のハードを新しく買わなければならないというイメージではないでしょうか。また、メーカーが指定するパソコンは高額なもので、故障時の買い替えや追加の買い足しに選択肢の自由がないと感じることはないでしょうか。 クラウド型であれば今お使いのパソコンをそのまま流用することも可能なので必要最低限の出費で稼働の準備ができます。専用機がいらないので準備が早い、つまり短期導入も可能です。また、推奨スペックを満たしていればどんなパソコンでもご利用いただけるので、新規開業の医療機関では、家電量販店やネットでまとめて安価に購入されるといったケースもよくあります。また、端末ライセンス無料の電子カルテも多く、人員増員や設置場所の拡大時にも大きな出費なく端末の増設が可能です。

院内に電子カルテ用サーバーの設置が不要

オンプレミス型の場合、当然ながら院内にサーバーを設置する必要があります。サーバーも最近ではずいぶんコンパクトになってきたとはいえ、設置場所には迷うものです。電子カルテの心臓部でありながら劣悪な環境に置かれて、埃まみれになっているサーバーをよく見かけます。本来であれば温度管理と防塵対策がされたサーバールームに設置することが理想ですが、小規模な医療機関ではそのような設備がないところがほとんどです。また、常時監視し適切な運用を行わないと大きなトラブル、長時間のシステム停止にも繋がります。サーバー管理とは実はとても大変な作業であり、環境に適した設備と迅速に対応できる人員が鍵となります。 クラウド型の場合、データセンターにて各医療機関のデータをお預かりしています。各社が準備しているデータセンターにもよりますが、当社では自社のデータセンターにて24時間体制で有人にて監視をしており、非常時にもすぐに対応できるよう備えています。サーバーに異常があったとき、現場に駆け付けなくてもデータセンター側で迅速に対応できるというのもクラウド型のメリットになります。このようにデータセンターにて適切な監視・管理が行われ、院内にサーバー管理者を必要としないので、人件費としてもメリットがあります。また、災害時のBCP対策にも有効的で、データの消失を防ぐ役割も担っています。(BCP対策については別コラムにて詳細がございますので是非ご参照ください)

インターネット経由なのでどこでもカルテの閲覧・書き込みが可能

前述の通りオンプレミス型の場合、院内にサーバーがあり、外部からの侵入を防ぐために閉じたネットワークを構築することが一般的です。セキュリティ面からすると当然の対応ですが院内のサーバーにあるカルテの情報を外からアクセスすることができません。外来のみのクリニックであればいいのですが、最近は往診に行かれる医療機関も増えてきました。そういった在宅診療に関しては、外出先で閲覧・書き込みができるクラウド型の電子カルテが重宝されます。

タブレットPCやスマートフォンでも利用できる

これに関しては各電子カルテメーカーによってできる・できないがあるかもしれませんが、iOSやandroidに対応した電子カルテも最近では多く見られます。例えば、在宅診療をしていると夜中に患者からの急な呼び出しがあると思います。その時に手元に紙のカルテなんてあるわけもなく、パソコンも持っていない、でもスマートフォンはだいたい持っています。往診先にスマートフォンのみを持っていき、カルテを確認しながら適切な処置、場合によっては救急搬送のための紹介状を作成するなど、緊急時もクラウドとスマートフォンの合わせ技で対応することができます。また、休暇や学会などで対応を別の医師に任せたときもスマートフォンでカルテの確認ができるので適切な指示を出すことが可能となります。

カルテのバージョンアップは自動で行われる

診療報酬の改定や薬価改定など、定期的に医療の仕組みが変わるということは周知の事実ですが、クラウド型の場合、そういった改定時にいちいちCDを用いて電子カルテサーバーのバージョンアップする必要はありません。サーバーはデータセンター側にあるのでバージョンアップはメーカーが随時行います。その他のカルテ機能のバージョンアップもデータセンター側で行うため、常に最新の状態で電子カルテを利用できるというのも、またクラウド型のメリットです。

クラウド型電子カルテのデメリット

インターネットでの接続が必須

クラウド型電子カルテはインターネットを利用したサービスのため、インターネット接続が必須です。大手通信会社の回線が全国的に障害を起こしてインターネットが止まったということが過去にありました。その場合電子カルテを利用することができなくなります。そういったことを想定してバックアップ回線を準備しておく、モバイルルータを準備しておく、スマートフォンのテザリング機能を準備しておく、院内にバックアップを残すなどの対策が必要です。

カルテ操作における確定・更新時の若干のタイムラグ

クラウド型はカルテ操作における確定・更新時はデータセンターのサーバーにアクセスを行うため、若干のタイムラグがあるかもしれません。クラウド型を検討されるときは事前に各メーカーのデモやお試し環境の利用で速度感を確認することをお勧めします。

月額費用が高額

月額費用の考え方として、オンプレミス型の場合、現状を維持する・保障してもらうための保険のような位置づけで「保守料」がかかります。クラウド型の場合、データセンターのサーバーを利用する、「利用料」がかかります。サーバーのメンテナンスや更新作業はメーカーが行うため、オンプレミス型に比べクラウド型の月額費用が高額になります。ただ5年ごとのリプレースはありませんので、「更新時に初期費用並みの更新費用がかかる」ことはなく、一定額でご利用いただけます。

まとめ

上述のとおり、クラウド型にはメリットだけでなくデメリットもあります。オンプレミス型とクラウド型とどちらがいいかは一概にも言いにくく、医療機関の規模や診療のスタイルによっても変わります。このメリット・デメリットを参考に、貴院様での電子カルテ活用のシーンをイメージしながら、クラウド型電子カルテを診療に活かせるかどうかご検討ください。